秋の夜長、いかがお過ごしでしょうか。 いつも和処Re楽を温かく見守り、
お引き立ていただき、心より御礼申し上げます。
誠に勝手ながら、このたび大将の体調不良により、
令和6年10月31日をもちまして閉店させていただくことになりました。
突然のご案内となり、長年のご愛顧にもかかわらずこのようなご報告となり ましたこと、
心よりお詫び申し上げます。
平成3年、大将の裏野功が「自分の信じる料理を、自分の手で作りたい」と
独立を決意し、大阪曽根崎の地に店を構えてから33年。
証券会社勤めだった私が、畑違いの飲食の世界に飛び込み、
女将を務めることになってから28年の歳月が 流れました。
店をオープンして、大将は3時間で「もう店やめる!」と言っていたと
お客様から伺い、なんと気の短い人かと思ったことを昨日のように覚えております。
ですが、「師匠から受け継いだ大阪寿司の味をちゃんと残していきたい」という
大将の 真摯な想いに心を打たれ、料理の「り」の字も知らない私でしたが、
女将として支えていく決意をいたしました。
当初は右も左もわからず、お客様から厳しいご指導もいただきましたが、
「大丈夫やで、気楽にいきや!」と温かな励ましの言葉もいただきました。
女将としての在り方、一人の人間としての生き方まで、多くのことを 教えていただきました。
今では、そのお客様方がお子様やお孫さんを 連れて来てくださるようになり、
時の流れを感じております。
黙々と包丁を研ぎ、味見をした時の「よし」というつぶやき。
一切の妥協を許さない大将の姿に、料理人としての誇りと美学を感じました。
「お客様に最高の一品を」という想いは、いつも大将が私に教えてくれた原点です。
本当にたくさんのお客様との思い出が、走馬灯のように思い出されます。
疲れた様子で立ち寄られたお客様が 元気を取り戻して帰られる姿。
結納から結婚、お子様の成長まで、 人生の節目に寄り添わせていただいた日々。
「父が、ここの料理を 本当に好きだった」と思い出を語ってくださったこと。
プロポーズの お手伝いをさせていただいた夜。お一人で来店された方との心温まる会話。
すべてが私どもの宝物でございます。
そんな大将が、今年、4月に大怪我をし、奇跡の復活をしましたが、
このところ体調を崩しがちになり…。
毎日包丁を持つ手に力が入らなくなってきている姿を見るのは、
妻として、また同じ夢を追いかけてきた者として、胸が締め付けられる思いです。
「まだまだお客様にご提供したい料理がある」 「もっと店を続けたい」
そう言って悔しさをにじませる大将の横で、私も涙を堪えることができません。
平成3年、二人で誓った「お客様に最高の料理とおもてなしを」という初心は、
この33年間、少しも揺らぐことはありませんでした。
これまで大将が築き上げてきた味と技を、最後まで守り通したい。
その想いで、残された日々、精一杯お客様をおもてなしさせていただく所存です。
長きに渡り、夫婦二人三脚で歩んでこられましたのも、
ひとえに皆様の温かいご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。
皆様との一つ一つの出会いが、私どもの人生を豊かに彩ってくださいました。
最後までご来店くださる際は、ぜひお声がけくださいませ。
大将も、体調の許す限り、
最後の一品を心を込めてお作りさせていただきたいと 申しております。
33年の感謝を、精一杯のおもてなしで お伝えできればと存じます。
末筆ながら、皆様の末永いご健康とご多幸を、心よりお祈り申し上げます。
和処Re楽
女将 裏野 由美子