女将

先日当店のこだわりということで、出汁のお話をしましたね。

 

大将

そやな。

 

女将

お客様から関西と関東のうどん出汁の違いで、なんで関東はあんなに出汁が濃いの?
という質問がありました。

 

大将

なるほど。何でかわかるか?

 

女将

それを今日は説明してください。

 

大将

はい。まず関東と関西の水の違いからお話します。関東は関東ローム層の火山灰の影響からか硬水です。(硬水と言っても海外に比べると軟水に近い硬水ですが)

そして関西は軟水です。

 

女将

水の違いで出汁の味が違うということ?

 

大将

まず、昆布出汁を取るときに軟水だったら昆布が短時間で膨らみ、昆布の旨味が十分に出汁に出る。それに対し硬水の場合は、昆布が十分に膨らまず、昆布の旨味が出汁に出ない。

また、昆布のうまみ成分は硬水のカルシウムと反応して”あく”がでてしまう。

そのため、昆布出汁に変わる硬水でもあくが出ない動物性たんぱく質のカツオで出汁を取ろうとカツオ節を大量に入れる。

すると今度はカツオのエグミが出汁に出るから醤油でごまかそうと、醤油を大量に入れる。だから濃い醤油黒い出汁になってしまうということや。

関西の場合は十分に昆布出汁が取れていて旨味が十分にでてるので、かつお節の量が少しで済み、味を整えるために薄口醤油を使う。

 

女将

なるほど、硬水では、美味しい昆布出汁が取れないということか。

 

大将

そうや。昔は関西の職人さんが関東に行っても、あの醤油黒いうどん出汁しかひかれへんかったということや。

今は、軟水の水が手に入るから、関東でも関西の出汁は引けるよ。

 

女将

じゃあ、うどんには関東の濃い出汁は合わないけどそばには合うと言われてるのは?

 

大将

それは、うどんは麺を打つときに大量の塩を入れて打つやろ。だからあの濃い出汁やったら、塩分がきつすぎるから、いただけない。

でも、そばは打つときに塩を入れないから、あの濃い出汁がちょうどあうねん。

 

女将

なるほど、それで関東ではうどんじゃなくて、そばなんやね。

 

大将

そうや。食文化にはそれぞれ理由がある。日本の食文化と海外の食文化の違いも環境の違いが大きいな。

海外の方がたくさん日本にきて、海外でも和食が健康にいいからと人気やけど、外国の方に日本の食文化について聞かれたときにちゃんと語れるようにしておいてほしいと思う。

 

女将

そのために、大将は寿司の講座をしたり、4種類「真昆布・羅臼・利尻・日高」の昆布だしを使って「鱧ちり」食べ比べの会をしたりしてるやん。

 

 

大将

あれは、それぞれの出汁に特徴があったけど、全部、美味しかったな。
最後の雑炊まで、4種類とも味が違うのには感動したな。

 

女将

参加されたみなさんも喜ばれてたよね。
また、やりましょう

 

大将

そやな。また、やろう。

 

女将

では、出汁以外のこだわりについてもお願しますね。

 

大将

もっと出汁について話したいけど、ほかにもこだわりがあるので、また今度にしよか。