女将

寒いね~鯖も脂がのってくるね。

この脂ののった鯖で棒寿司を作ったら美味しいやろうね。

 

大将

そやな。当店の自慢の棒寿司もこの時期は別格やからな。

 

女将

もうお正月用の注文が入っているもんね。

ありがたいです。

さて、前回は鯖の棒寿司についての話でしたが、今回はバッテラと松前寿司の話をお願いします。

 

大将

では、まず先にバッテラからいこか。

 

女将

お願いします。

 

大将

まず、バッテラといったらどんなイメージがある?

 

女将

いきなり問題ですか?

んー四角い 安い 鯖薄い 白い昆布が上に乗っている。

こんな感じかな。

 

 

大将

そやなぁ。まぁみんな、大体そんな答えやと思うけど、今のバッテラと昔のバッテラとでは、見た目も形も全く違うもんやったそうや。

 

女将

へぇーそうなん。どう違うの?

 

大将

わしも昔のバッテラの実物は見たことないけど、師匠に聞くと、まず、魚は鯖じゃなくコノシロを使ってたそうや。

理由は、昔はコノシロがたくさん捕れて価格も安かったかららしい。

 

女将

でも、コノシロを使っていたとしても、バッテラとどうつながるの?

 

大将

バッテラはポルトガル語で「小舟」という意味で、今でいうボートの事をバッテーラと呼んでいたそうや。

コノシロの頭を取って開くと三角形のボートのような形になるやろ。

 

女将

なるほど。アジの開きやホッケの開きみたいな形やね。

 

大将

そうそう。そして開いたコノシロの真ん中を切って、片身をもう半分に開くと、また、ボートの形になるやろ。

 

女将

なるなる。皮の部分が半分、身の部分が半分になりボートの形になるね。

 

大将

そしてシャリを練って船形にしコノシロを置いて布巾でしめる。

見事に小舟の形をした寿司ができるやろ。

当時の人たちはその寿司を見て、「おぉ!バッテーラ(小舟)みたいや」と叫んだんやろな。

そこから、コノシロで作った寿司をバッテラと名付けたそうや。

 

女将

へー 昔の人が叫んだかどうかしらんけど、バッテーラ(小舟)の形をしてたからバッテラか。

面白いね。昔は、バッテラもふきん締めにしてたん。

 

大将

そやな。そして、そのバッテラが好評で、たくさんの注文に応えられるように、「船形の木枠」を作り押し寿司にして売り出したそうや。

わしの師匠の話によると、昔はその船形の木枠に合わせて酢でしめたコノシロを入れて、シャリをのせ、上から押して作ったんやけど、当時は上に昆布をのせず、煮返しを塗っていたから、見た目も皮と身のコントラストが凄くきれいやったそうや。

 

女将

へー本物の小舟のようやったんかな。見てみたかったわ。

 

大将

大将:その後、コノシロが捕れなくなって、値段が急騰したために、鯖で代用するようになってからは、コノシロと違って身も大きいから鯖を5枚~6枚にへいで(削ぐ)使うようになった。

 

女将

鯖は大きすぎて小舟の形にならないから、今の長方形のかたちになったんかな。

 

大将

そうやろな。

でも、そのバッテラを開発した店が、バッテラを復活させたそうやで。

魚は鯖を使っているみたいやけど、小舟の形をした木型を使っている。

天満天神繁盛亭の近くにあるお店や。

お店の前に船形の木型とバッテラの由来を書いたものを飾ってるで。

 

女将

へー凄い復活させたんや。

なんか、昔の仕事が受継がれているって嬉しいね。

 

大将

そやな。寿司の世界に限らず伝統は大事にせなあかんし、守り続けなあかんなぁー

由来を聞いてもイメージできへん人も多いやろうからな。

よくぞ復活させてくれたと思ったわ!

うちは本物の棒寿司の伝統を守っていくから、本物のバッテラの伝統を守ってほしいな。

 

女将

ほんまやね。

伝統を守りつつその時代に合った要素を取り入れていく。

いつの時代も同じことの繰り返しやね。

 

大将

バッテラだけでなく松前寿司も時代のニーズに合わせて変化してきてるねんけど、

ちょっと長くなったので、松前寿司の話は次回にしよか。

 

女将

今度その店に連れて行ってね。

 

大将

大将:そうくると思った・・・