女将

今回は当店の名物である、鯖の棒寿司についてです。

 

大将

よくお客様から「鯖寿司」と「鯖の棒寿司」の違いは何ですかと聞かれるな。

 

女将

そうやね。あと、バッテラと松前寿司の違いとか。

 

大将

なんか今は全部が一緒になってるみたいやけど、「鯖寿司」といえば「鯖の寿司」やから「棒寿司」も「松前寿司」も「バッテラ」も鯖を使っていたら全部鯖寿司や。

 

女将

なるほど全部鯖を使っているから鯖寿司やね。

じゃあ、それぞれ鯖を使っていても呼び方が違うということは、作り方が違うということ。

 

大将

そうや。鯖だけに限らんけど、当店は「鯖の棒寿司」が自慢やからまずは棒寿司の話をしよか。

 

女将

お願いします。

 

 

大将

皆さんが想像している棒寿司は棒のように長い寿司だと思うけど、ただ棒寿司のように長いから棒寿司というのではなく、わしが師匠から教わった昔ながらの棒寿司は「ふきん締め」という仕事をする。

 

女将

ふきん締め?あの布巾?

ふきん締めといっても始めて聞かれる方もいらっしゃると思うので、説明おねがいします。

 

大将

はい。棒寿司の特徴はシャリ(酢飯)を手で練ることや。

最近では、長箱とよばれる寿司専用の木箱に入れて押したものを棒寿司といっているようやけど、わしらからしたら、おいおい・・ちゃうやろ!ということになる。

棒寿司の特徴は、まずシャリを手で練りながら中の空気を抜いていく。

練るといってもわかりにくいかな~

 

女将

私は趣味で陶芸をしてるけど、まず最初に土を練る時に「菊練り」と言って土を練りながら、中の空気を抜いていく方法やけどそれと同じようなもんかな。

 

 

大将

そうやな。

棒寿司は、ご飯粒を一切つぶさずに練りながら中の空気を抜いていく。

中の空気を抜くのは一緒やけど、菊練りみたいに花びらの形にはせずに棒の形にするけどな(笑)

 

女将

棒寿司が菊の花の形をしてたらおもしろいね。

陶芸では「菊練り」をしっかりして中の空気を抜かなかったら、形成した時にひびが入ったりするねんけど、棒寿司もちゃんと練れてなかった出来上がりに違いがあるの?

 

大将

棒寿司の場合は、空気がちゃんと抜けていなかったら、腐敗が早まるので、日持ちがしない。

そもそも大阪寿司というのはにぎり寿司と違って時間が経つごとに美味しさが増していく寿司で、美味しい状態でいかに日持ちをさせられるかというのも技術の一つや。

日持ちをさそうと練りすぎたらお餅みたいになるし、練らなかったら日持ちがしない。

ご飯粒をつぶさず中の空気だけを抜く。これが職人の技や。

一週間は常温で十分持つような仕事をする時もあるよ。

 

女将

へ~一週間も持つの。 凄いね~

陶芸では「菊練り3年」とかいうけど、棒寿司も「シャリ練り3年」とか(笑)

 

大将

まぁシャリばっかり3年も練ってるわけにもいかんけど、1年目の職人と3年目の職人が作った棒寿司では明らかに味が違うよ。

逆に陶芸家は棒寿司を作るのうまいんとちゃうか(笑)

 

女将

じゃぁ、本物の棒寿司を作る職人がいなくなったら、陶芸家に頼まなあかんね。

 

大将

そんなあほな!

 

女将

で、そのあと練ったシャリはどうするの。

 

大将

濡らして固く絞ったふきんの上に酢で〆た鯖を置いて、その上に練って棒状にしたシャリを置く。

そしてくるっと布巾で巻いて締める。

これが「ふきん締め」や。

この時に横から見て形が扇状になっているのが良い。

今ある棒寿司は全部ころんと、というかぼてっとしてるように思うな。

 

 

女将

棒寿司ってそんな決まりがあんねんね。

 

大将

今は分厚い鯖を用いてシャリより鯖の方が厚かったりするのがうけてるけど、バランスが良いとは言われへんな~

 

女将

まぁ人の好みやからね。

皆さんも機会があれば昔ながらの技法を用いた昔ながらの鯖棒寿司を一度当店で召し上がってくださいね。

 

大将

そやそや!

棒寿司、特に鯖棒寿司の特徴の最後は黒板昆布で巻くということや。

 

女将

黒板昆布?

 

大将

そう。最高級の分厚い真昆布をまるまる1枚使う。

黒板昆布を、味付けした出汁が、なくなるまで炊きつめるねんけど、この黒板昆布で鯖の棒寿司を巻くと、徐々に昆布のうまみが鯖に入っていって何とも言えない味になる。

だから大阪寿司は時間を置いたほうが美味い寿司なんや。

また、シャリの練り方、鯖の締め方、昆布のうまみが鯖に入る時間、すべての時間を計算してお客様が召し上がる時に、一番おいしい状態に持っていくのが本来の大坂寿司の特徴や。

 

女将

握り寿司はお客様の前に出した瞬間が一番おいしいけど、大阪寿司は、お客様が食べる時間を計算して作るんやね。

 

大将

そうや。

まちゃれ寿司(いついつが一番おいしくなりますので、その時まで待って食べてください)とか、おじゃれ寿司(いついつに一番おいしい状態になりますので、その時に食べに来てください)といわれる所以や。

 

女将

へ~まちゃれ寿司、おじゃれ寿司ねぇ

なんかいいね。

うちはお土産に鯖の棒寿司をお渡ししますが、お客様には、いついつにお召し上がりくださいと言っているので、まちゃれ寿司やね。

 

大将

そうやな。

棒寿司は他の箱寿司や巻き寿司と違いより日持ちがするのが特徴やな。

 

女将

棒寿司は昔の人の知恵やね。

それが時が経つごとに早く食べたいというお客様のニーズに合わせて、箱寿司や巻き寿司が出てきたんやね。

 

大将

そうやな。

お客様の要望で大量生産しなあかんから手で絞めてたら間に合えへん。

食は時代と共に変化していかないと伝統も守られへんけど、昔の技術を知ったうえで変化をさせていってほしいな。

 

女将

ようやね。

鯖寿司だけでも、棒寿司、松前寿司、バッテラと呼び方が違うけど、技術の違いも知らず、なんか一緒にしてしまっていたりするもんね。

 

次回はその違いについてお伝えしたいと思います。